ガクアジサイ
これまでの人生50余年、アジサイといえばアジサイだと信じて疑わずに生きてきた。しかし実際には、アジサイにも種類があったのだ。なんということだ!
近所で見かけたこの花は「ガクアジサイ」というらしい。中央のツブツブが花で、その周りの大きな花に見えるのは「装飾花」といい、実際にはガクに相当し、このガクがまるで額縁のように中央の花を囲んでいることから「ガクアジサイ」という名前になったらしい。
しかし、彼らはなぜニセモノの巨大な装飾花を建設したのであろうか。装飾の中央には蜜腺らしきダミーまで用意する周到さである。一説によると、やはり受粉のために虫をおびき寄せるためらしい。
つまり彼らは、一種の詐欺行為を働いている。お店の前に、ものすごい派手で美人なマネキンを設置しておき、フラーと寄ってきた客を「どうぞどうぞ」と店内に誘導するのである。そして入ってみたら全然ちがうタイプの子が出てきた。「チェンジ」と言えない気の弱い客を、食い物にしているのだ。
なんということだ! 許せん! と一瞬思うけど、しかし彼らは、自分自身の容姿がほかの花に比べて地味なことを自覚しているのかもしれない。だからこそ、そのような知恵を働かせたのではないか。「謙虚」という花言葉がついたのも、その正確な自己評価に理由するのかもしれない。
個人的には、ふつうのアジサイよりこのガクアジサイのほうが好きかもしれない。シンパシーを覚えるとかではなくて、なんだか美味しそうに見えるから。中央の薄いブルーとグリーンのコンペイトウみたいな花は、まるで高そうなスイーツのようだ。