アジサイ
近所のマンションのエントランスで花の世話をしているオジサンがいて、「このアジサイ、キレイですねー」と声をかけたら、顔をシワクチャにして「そうでしょう!」と満面の笑みを浮かべた。可愛がってるんだなあ。その愛情のおかげなのか、たしかにこのアジサイは、ほかのところの花よりもひときわ美しく見える。花も犬猫も人間も、愛情をよく受けたものは美しくなる。
この花も例によって、花に見える部分はガクで、中心のおしべ・めしべに見えるところが花なのだそうだ。ハナミズキといい、アジサイといい、長田区や兵庫県はトリッキーな花を好む傾向がある。
アジサイは昔「集真藍(あづさい)」と呼ばれていたらしく、万葉集では「安治佐為」と書かれていた。やはり漢字伝来より前からあった花ということがわかる。
なお、現在当てられている「紫陽花」という漢字は、どうやら間違いらしい。唐の白居易が別の花(ライラックという説がある)を「紫陽花」と表現したのを、どこかで間違えてアジサイに使ってしまったそうだ。
アジサイは日本固有の植物だったが、シーボルトが海外に紹介し、西洋でも親しまれるようになったとのこと。現在では、品種改良されて逆輸入されている。本来は、土壌が酸性だと青~紫、アルカリ性だとピンク~赤の花を咲かせるが、白いのはアントシアニン色素が欠落している種で「アナベル」と呼ばれる。北アメリカで品種改良された種だそうだ。